認知症で日本をつなぐシンポジウム2018開催報告

Report

「当事者とは~本人の思い、家族の思い~」をテーマにしたシンポジウムを開催

日時:2018年9月16日(日) 13:00~16:00
場所:東京都医師会館 2階講堂

認知症関係当事者・支援者連絡会議は、2018年9月16日、「当事者とは ~本人の思い、家族の思い~」をテーマとしたシンポジウムを開催しました。
当日は、15を超えるメディアと約200人の参加者で会場がほぼ満席となる中での幕開けとなりました。

挨拶は、当会議の4団体を代表して「認知症の人と家族の会」代表理事の鈴木森夫が行いました。 2017年の京都ADI国際会議での出会いを機に歩み寄った経緯を紹介し、「それぞれの立場を尊重しつつ互いに緩やかな連携をし、当事者たちの声にならない声を国内だけではなく世界へとアピールしていきたい」と、抱負を述べました。

記念講演は、アルツハイマー病研究の第一人者である国立長寿医療研究センター研究所所長の柳澤勝彦氏による「認知症 これからの予防・診断・治療」。
アルツハイマー病の発症メカニズム、脳内に病変があっても認知症を発症しないように「認知予備能」を高めることの重要性や、ストレスを避けた生活や腸内細菌のバランスを良好に保つことに認知症予防効果が期待されること、これまで対症療法しかなかった認知症治療に今後根本治療の可能性もあることなど、認知症医療の最新情報をご提供いただきました。

「リレートークとディスカッション」では、はじめに、4つの団体の代表者が登壇し、それぞれの活動について紹介しました。

その後、認知症に向き合っている多くの人の声を届けるため、それぞれの団体に所属する患者や家族によるビデオメッセージを上映しました。

≪画像をクリックしていただくとビデオメッセージを見ることができます≫


  • 認知症になっても安心して働ける場所と機会を
    (認知症の人と家族の会)
  • 妻の介護は生きがい
    (男性介護者と支援者の全国ネットワーク)
  • 良い医師を見つけ出し、早期発見早期治療を
    (レビー小体型認知症サポートネットワーク)
  • 認知症になっても、支援を待たず前向きに自分で動く
    (全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会)
  • アメリカから日本へ移住した母の居場所づくり
    (全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会)

国際医療福祉大学大学院准教授の小野寺敦志(全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会)が座長を務め、認知症の本人、介護する家族、サポートする支援者、のそれぞれの立場から4名が登壇してディスカッションを行いました。 「遠距離介護で離れていても、日ごろの些細な変化に周囲が気づくことが重要」、「認知症になってみて味わった心ない偏見をなくしていくための講演活動がしたい」、「地方においては専門医が不足し、認知症関連の組織団体も少なく悩みを共有する機会がない」、「信頼できる医師を探し、症状に合った薬が欲しいと声をあげることも大事」など、心の交流や支援のネットワークを広げ、認知症になっても安心できる社会づくりへ向けての率直な意見や議論が交わされました。

3時間に及んだシンポジウムは、全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会会長である宮永和夫による閉会の挨拶とともに、一本締めの和やかなムードで幕を閉じました。
本シンポジウムには、医療行政に関わる政府関係者や、医薬系研究者、患者団体や介護家族、マスメディアなど、多くの方々にご参加いただき、立場を超えて緩やかな連携の手を取り合う未来に向けての、希望のあるスタートを切ることができました。

来場者にご協力いただいたアンケートでは、「色んな当事者の声を聞くことができ、それぞれの当事者のつらさの違いが分かった」、「決して内向きにならず、周囲との色んなつながりを大事にしたい」などのご意見の他、当会議の今後の活動への期待を込めたメッセージを数多くいただきました。